■■物語■■

本、一冊の本がある

人が本を読み、物語とともに生まれたその感情は
物語の最期のページがめくられ、終焉をむかえた時に
わずかな、余韻を残して共に消滅する

例え納得のいかない結末であっても物語は終了する
妥協という、大人の感情を残して

しかし、物語の登場人物たちには終焉はこない
一人でも読者がいるかぎり
果てることなく、受け入れがたい結末を繰り返し続ける
それでも、大抵の物語たちはいずれ読まれなくなり
物置に詰まれ、古本屋に並び
忘却という名前の結末を迎えることができる

再び、誰かにそのページをめくられるその時まで


けれど、この国には
何百年にも渡り結末をむかえない物語がある
決して休まることにない物語
決して果てることのない物語
親が子に語り、その子供が親となった時、また子供へと語っていく

その物語を
その本の名を

御伽草子 という


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